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お彼岸に阿古屋 [歌舞伎]

暑さ寒さも彼岸までとは言うけど、なんだか妙に生温かかった
春のお彼岸の中日の今日は、京都南座に「南座新開場記念 坂東
玉三郎特別公演」を観に行ってきました。
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今回の演目は、壇浦兜軍記 阿古屋、太刀盗人、傾城雪吉原。
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阿古屋は、昨年、Eテレのにっぽんの芸能で玉三郎さんが映像
を交えながら直々に詳しく解説をしてくれた演目で是非とも見
たいと思っていたところ、年始の文楽でも上演され、そちらも
しっかり楽しませてもらって、十分に予習もできたところで、
今回の玉三郎さんの生阿古屋と相成りました。
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平家の残党狩りの中、悪七兵衛景清の愛人である遊君阿古屋
(玉三郎さん)が、景清の居場所を詮議するために代官所に
つれてこられ、秩父庄司重忠(彦三郎さん)は、阿古屋に琴、
三味線、胡弓の三曲を弾かせることで、心の乱れを探ろうとす
ると言う話で、なんと言っても見どころは阿古屋と言うか玉三
郎さんの琴、三味線、胡弓の演奏。特に胡弓の演奏は満員の会
場が独特の緊張感に包まれて、静寂の中で胡弓の音だけが響い
ている感じでした。いぁ~~!凄かったです。痺れました。
悪役なんですが、人形振りの岩永左衛門(坂東亀蔵さん)が、
緊張感のある舞台をところどころで和ませてくれます。シュッ
とした感じの功一さんの榛沢六郎もイイ感じでした。

次の太刀盗人は、狂言の演目“長光”をベースにした話で、何度
か狂言では見ているんですが、歌舞伎で見たのは初めてでした。
田舎者の万兵衛(坂東亀蔵さん)が都での仕事も済んでお土産
でも買おうと市場をウロウロしていると、すっぱ(泥棒)の九
郎兵衛(彦三郎さん)に目を付けられ、持っていた太刀を盗ま
れるという話。万兵衛が手に持っている太刀の紐を、すっぱの
九郎兵衛が自分の腰に巻いて、自分のモノだと言い出すところ
が笑えます。
緊張感のある能の間のひと息って感じの狂言と同じように、玉
三郎さんの阿古屋と傾城雪吉原の間で、ちょっとひと息って感
じでした。

最後の傾城雪吉原は、舞踊モノで玉三郎さんの傾城が、雪景色
の中、傘を持って舞台にせり上がってくる姿は息を呑むほどの
美しさでした。
絢爛豪華な衣装で、冬から春、夏、秋の季節の移ろいと一日の
時間流れの中、どことなくアンニュイで耽美的な雰囲気を漂わ
せながら美しく舞う玉三郎さんの傾城、幽玄の世界が感じられ
て素晴らしかったです。

お彼岸の語源は波羅蜜多で六波羅蜜寺と言えば阿古屋って感じ
で、お彼岸にふさわしい(?)演目を楽しませてもらいました。
感謝です。

観劇前の腹ごしらえは、「総本家にしんそば 松葉(北店)」
さんで、にしんそばとちりめん山椒ごはんをいただきました。
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分厚いにしんから染み出す甘めのタレがあいまった蕎麦、美味
しい!

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久々の顔見世 [歌舞伎]

今日はちょっと早起きして、すっかり冷え込んだ師走の京都へ。
2年間の耐震改修工事を終えた南座の新開場記念で、先月から
2ヶ月の間開催されている顔見世興行の第2弾、12月分の公演
「京の年中行事 當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」
を観に行ってきました。
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南座としては3年ぶりの顔見世だそうですが、私の方は京都は
ちょいと遠いのとチケット(土日の安い奴)が取り難いってこと
で、久しく顔見世に行ってなかったので、さらに懐かしさを感
じました(後でブログを見返したら2011年以来なので7年ぶり
の顔見世でした)。久しぶりですが、顔見世=師走の京都って
感じで、まねきの上がった南座はやっぱり風情がありますね。

顔見世に行ったときのルーチンを思い出し、先ずは八坂神社に
参拝。
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さすがに朝早めなだったので、観光客も少なくゆっくりお参り
ができました。

そうこうしているうちに開場の時間になったので南座に戻って
リニューアルした劇場に入り、不慣れな感じで席についたんで
すが、席の幅がめちゃ狭くて膝が入らない!こんなに狭かった
っけ?涙
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演目は、菅原伝授手習鑑の寺子屋、鳥辺山心中、ぢいさんばあ
さん、恋飛脚大和往来の新口村。

先ずは、“寺子屋”。松王丸に芝翫さん、武部源蔵は愛之助さん、
源蔵の妻戸浪には扇雀さん、松王丸の妻千代には魁春さん。
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恩のある菅丞相への忠義のために菅丞相の子供菅秀才を救おう
と、松王丸と千代が自分の子供小太郎を身代わりに立ってると
言う話。歌舞伎、文楽ともに何回も観ている寺子屋ですが、毎
回、涙してしまいます。

次は、半七捕物帳で有名な岡本綺堂作の“鳥辺山心中”。祇園や
四条河原が舞台の京都の話で、半九郎には梅玉さんでお染には
孝太郎さん、そして源三郎は右團次さんで市乃助は左團次さん。
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祇園のお茶屋でくだらない言い争いから親友市乃助の弟源三郎
と喧嘩になり切ってしまった半九郎がお染と心中すると言う話。
四条河原の舞台は美しいですが、話自体は、なんのこっちゃ?!
って感じです。

そして、森鴎外作の“ぢいさんばあさん”。10年前の同じ南座の
顔見世で玉三郎さんと仁左衛門さんで拝見させてもらった舞台。
今回は仁左衛門さんと時蔵さんで楽しませてもらいました。
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これも事件の発端が、京都の鴨川の床なんですが、37年ぶりに
再会する老夫婦の風情が、可愛くって切なくって、素敵なお芝
居でした。

最後は、恋飛脚大和往来の“新口村”。この話も文楽と歌舞伎で
何回も観てて、若干説明的な文楽の舞台の方が印象に残ってい
るので、歌舞伎の方はなんとなく新鮮に観させてもらいました。
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忠兵衛は藤十郎さんで梅川は扇雀さん、そして孫右衛門には鴈
治郎さんという親子三人でのお芝居、素晴らしかったです。

こちらの楽しみ!幕間のお弁当は、南座東側の「矢倉寿し志満
家」さんのちらし寿司。そして、こちらは南座西側の「祇園饅
頭」さんの六方と栗蒸しようかん。
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どちらも久しぶりに食べました。が、美味しい(特にここの六
方大好きです)!
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長丁場ってことで、お弁当以外に売店で井筒八ッ橋本舗さんの
南座印の井筒の三笠(生八ッ橋入り)なんてのも買って、幕間
に頬張りながら観劇させてもらいました。

顔見世の後、「SWITCH 特集 今ぞ、梅佳代」の刊行記念とし
て、TOBICHI京都さんでやっている梅佳代さんの写真展に立ち
寄ってみました。
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梅佳代さんの故郷能登で今年の夏に撮った新作が、少しだけで
すが展示してありました。子供たちの笑顔が素敵な写真です。
会場では、壁には鉛筆で梅佳代さんが書いた挨拶や落書き?も
楽しめますよ!

同じ階にあるギャラリーギャラリーさんでは、フィンランドの
テキスタイル作家NINA NISONENさんの刺繍作品が展示され
てました。
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めちゃおしゃれな雰囲気です。

日が落ちて冷え込んできたので、師走の寒い京都をそそくさと
後にして大阪に戻りました。
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久々の顔見世、独特の風情でやっぱり良かったです。

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夏の歌舞伎 [歌舞伎]

連日の猛暑で出歩くのも危ない感じですが、今日も涼しい
室内で過ごそうと、大阪松竹座に「松本幸四郎改め 二代目
松本白鸚 市川染五郎改め 十代目松本幸四郎 襲名披露 七月
大歌舞伎(昼の部)」を観に行ってきました。
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お祝いムード満載!
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昼の部の演目。先ずは、廓三番叟。今回は襲名披露興行っ
てことで、お祝いの舞である三番叟を郭に見立て、傾城千
歳太夫(孝太郎さん)が翁、新造松ヶ枝(壱太郎さん)が
千歳、太鼓持藤中(歌昇さん)が三番叟と言う趣向で華や
かな舞を見せてもらいました。

次は、菅原伝授手習鑑から車引。松王丸(又五郎さん)、
梅王丸(鴈治郎さん)、桜丸(扇雀さん)の三兄弟は、そ
れぞれ藤原時平(彌十郎さん)、菅丞相、斎世親王の舎人
を務めていたが、時平の陰謀で菅丞相と斎世親王が政権か
ら追い落とされたことで、梅王丸と桜丸は主人を失ってし
まう。そんな二人が時平に恨みを晴らそうと、ちょうど
吉田神社に参詣に来た時平の牛車を襲うが、松王丸に邪
魔をされ、争ううちに牛車が大破し中から時平が現れる。
これ幸いに梅王丸と桜丸が時平に挑むが、凄まじい威光
に動けなくなってしまうと言う話。時平(彌十郎さん)
の威嚇する姿が強烈です!凄い。

そして、天衣紛上野初花 河内山から松江邸広間より玄関
先まで。松江出雲守(歌六さん)が、腰元の浪路(壱太
郎さん)を我がものにしようとするが、思うようになび
かないのに腹を立て、手打ちにしようとするのを宮崎数
馬(高麗蔵さん)と高木小左衛門(彌十郎さん)にいさ
められている時に、上野寛永寺からの使僧に化けた河内
山宗俊(幸四郎改め白鸚さん)が、浪路を助けに屋敷を
訪れる。宗俊が出雲守を説得し帰ろうとした時、北村大
膳(錦吾さん)が、宗俊の化けの皮を剥ぐが、逆に開き
直って、啖呵を切って立ち去ると言う話。使僧に化けよ
ぼよぼ演技の白鸚さんの宗俊が、正体がばれると一変し、
江戸っ子っぽく威勢良く啖呵を切る姿が、なんともユー
モラスで素敵でした。

最後は、歌舞伎十八番の内 勧進帳。歌舞伎の代名詞みた
いな演目なので解説はしませんが、染五郎改め幸四郎さ
んの武蔵坊弁慶と仁左衛門さんの富樫が対峙する姿が素
晴らしかったです。端正で品のある仁左衛門さんの富樫
も良かったですし、最後に大酒を飲んで、仲間に早く逃
げるように促す幸四郎さんのちょっとお茶目な弁慶もイ
イ感じでした。

大雨が降って梅雨が終わったかと思ったら、一気に真夏
が来たって感じですが、この時季、京都では祇園祭が行
われ、関西では祇園祭の時季に鱧を食べる習慣があるっ
てことで、鱧寿司の詰め合わせを買ってきました。
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色々楽しめて美味しかったです。同じニョロニョロ系で
すが、今週末は鰻ですね!

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初春は玉三郎さん [歌舞伎]

まだまだお正月気分って感じで、おめでたい初春公演を
観に、大阪松竹座の「坂東玉三郎 初春特別舞踊公演」に
行ってきました。
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出演は、坂東玉三郎さんと中村壱太郎さんのおふたり。
日本の四季を4つの舞踊で、たっぷりと優雅で優美に見
せていただきました。
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先ずは、“お年賀 口上”。今回は舞踊の公演と言う事で、
本編でのしゃべりが無いので、最初に玉三郎さんと壱太
郎さんが舞台に並んで、ご挨拶と少しだけ演目の紹介の
時間を設けたそうです。
玉三郎さんが東京の江戸歌舞伎で壱太郎さんが関西の上
方歌舞伎、東西の歌舞伎の繁栄を願いつつ、鷺娘のよう
な玉三郎さんが得意とした踊りを次世代に受け継ぐと言
う想いも強く感じられました。

最初の演目は、おふたりで春の“元禄花見踊”。華やかな
舞台で初春公演のおめでたい雰囲気が漂っていました。
華やかな中にも若々しい壱太郎さんと落ち着いてしっと
りした玉三郎さんの対比が素敵でした。

次は、ちょっと季節が飛んで秋の“秋の色種”。こちらも
おふたりで踊られ、秋の夜長の月明かりの下、物悲しい
琴の音色が心に沁みました。

そして冬の“鷺娘”。こちらは壱太郎さんおひとりの踊り
で、雪の降る水辺に白無垢で現れた鷺の精の妖艶な舞で
はじまり、引き抜きやぶっ返り(舞台上での早着替え)
で、赤や桃色などの華やかな着物の町娘姿で軽やかな恋
心を踊り、最後は白鷺の姿に戻り瀕死の白鳥よろしく切
なく息絶える。息を呑むような美しさでした。

最後は玉三郎さんで夏(四季のすべてが含まれるんです
が、玉三郎さんの好きな歌の部分で夏の設定)の“傾城”。
真っ暗な会場の提灯の灯りが舞台の中の吉原の提灯とつ
ながり、その中での花魁道中、いきなり心を鷲づかみ!
そして極彩色の衣装に包まれた玉三郎さんが、待てど訪
れない男への想いを切々と踊られ、耽美的な世界にどっ
ぷりと浸らせてもらいました。凄かったです。

初春公演と言うことで、お囃子が流れるロビーや開演ま
での会場内では獅子舞も披露され、お祝いムード満載で、
楽しいひと時でした。
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夏の歌舞伎 [歌舞伎]

蒸し暑い日曜日。今日は、「大阪松竹座新築開場二十周年記念
七月大歌舞伎 関西・歌舞伎を愛する会 第二十六回(夜の部)」
を観に行ってきました。
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夜の部の演目は、“再春菘種蒔 舌出三番叟”、“通し狂言 盟三五
大切”より序幕・二幕目・大詰でした。
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昼の部には、大阪の夏と言えばこの演目って感じで染五郎さん
の“夏祭浪花鑑”もあったんですが、今回は、片岡仁左衛門さん
の“盟三五大切”が観たくて夜の部にしました。

先ずは、“舌出三番叟”。三番叟には鴈治郎さん、そして千歳に
壱太郎さん。ユーモラスで華麗な舞を楽しませてもらいました。
が、3階席からは舌出しまでは確認できませんでした!

そして、楽しみにしていた、仁左衛門さんが薩摩源五兵衛を演
じる“通し狂言 盟三五大切”。
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作者は四谷怪談で有名な鶴屋南北。源五兵衛は、実は赤穂義士
の不破数右衛門と言うことで、忠臣蔵の外伝のような様相を呈
し、本編には登場しませんが、源五兵衛が浪人になる発端にな
った事件(金が要るようになったきっかけ)に、四谷怪談の伊
右衛門もからんでたり(小万と三五郎が越していった部屋が、
お岩さんの住んでいた部屋と言う設定は、ちょっと笑いました
が・・)と、陰惨な話の裏側に忠義、親子愛、夫婦愛と人間関
係が複雑にからんだ、多重構造の面白さが楽しめる作品でした。
が、切り落とした女の生首を抱え、雨の中、傘を片手に花道を
去っていく源五兵衛の姿と生首に飯を食べさせようとするシー
ンは、夏っぽくゾクッとしました(冬の話ですが・)!怖い。

源五兵衛をだまし金を巻き上げる芸者小万には時蔵さん、そし
て、笹野屋三五郎には染五郎さん。源五兵衛の家来六七八右衛
門には松也さん、三五郎の父了心には松之助さん、小万の兄で
家主で幽霊のくり廻しの弥助には鴈治郎さん、芸者菊野には壱
太郎さん、源五兵衛の伯父富森助右衛門には錦吾さん、ごろつ
き勘九郎には橘三郎さん、仲居お弓には吉弥さんなどなどの面
々が出演されています。

前半の小万に入れあげているのんきな源五兵衛から、後半のだ
まされたと分かり、冷静に狂気し、関係者を次々に惨殺し、乳
飲み子をその母(小万)に刀を持たせて刺し殺させる源五兵衛
を演じてらした仁左衛門さん。
会場中が息を呑むほどの迫力でした!やっぱり凄い!

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文楽と落語を感じる歌舞伎 [歌舞伎]

GW8日目。曇天模様でパッとしない天気の中、今日は、大阪松竹
座新築開場二十周年記念の「五月花形歌舞伎」を観に大阪松竹座
に行ってきました。
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今回は、花形歌舞伎と言うことで、若手(?)の市川猿之助さん、
中村勘九郎さん、中村七之助さんが競演される舞台。

先ずは、先日、野崎まいりに行ってしっかり予習をした、文楽で
もお馴染みの新版歌祭文「野崎村」。
本筋は、お染、久松の悲恋の物語ですが、この段は、野崎村の百
姓久作(彌十郎さん)の娘のお光が主役。そのお光を務めるのは
七之助さん。

大阪から野崎村に戻った久松(歌昇さん)との祝言を控え、楽し
そうに準備をするお光。そこに油屋の娘お染(児太郎さん)が訪
ねきたから大騒ぎ!恋敵お染に対して嫉妬して意地悪をするお光
ですが、一緒になれないのなら心中をしようと思っているお染と
久松を察し、2人を救うために身を引き尼になる覚悟をして、髪
を下ろします。最後は、迎えに来た油屋の後家お常(竹三郎さん)
と共に、久松は駕籠、お染は舟で大阪に戻るのを、お光と久作が
見送ると言う話。

最初、ソワソワウキウキ楽しそうに祝言の準備をしているお光か
らはじまり、お染に意地悪をしているお光、覚悟を決めて尼にな
るお光、最後は茫然自失で2人を見送った後に泣き崩れるお光の
心情の変化を七之助さんが見事に演じてらして、素晴らしかった
です。端々で浄瑠璃に合わせて人形を意識したような所作で演じ
てらしたのもイイ感じでした。

次は、三遊亭円朝作による落語の怪談話「怪談乳房榎」の序幕・
二幕目、休憩を挟んで三幕目・大詰。
“三世實川延若より直伝されたる十八世中村勘三郎から習い覚え
し”と“中村勘九郎三役早替りにて相勤め申し候”サブタイトルが
ついている通り、勘三郎さんが工夫した演目で、菱川重信と下男
正助とうわばみ三次の三役を、勘九郎さんが早替りで演じるのが
見せ場の舞台。三役の勘九郎さんの他、重信の妻お関には七之助
さん、敵役の磯貝浪江には猿之助さん、そして、早替わり以外に、
本水を使った滝壺での大立回りも見せ場でした。

絵師菱川重信の妻お関に横恋慕した磯貝浪江、お関を助けた縁で
重信の弟子となり、重信が高田南蔵院本堂の龍の絵を描くために
出かけた隙に、子供真与太郎を人質に自分の物にする。お関を手
に入れるために重信殺害を企て、下男正助を仲間に引き入れ落合
田島橋で重信を殺害。真与太郎も邪魔なので正助に滝壺に放り込
んで殺すように頼むが、その後で正助も殺すように悪友うわばみ
三次に金を渡し、滝壺での正助と三次の大立回り!重信の幽霊に
助けられ正助は真与太郎と一緒に逃げ、数年後、乳房榎に願掛け
に来た磯貝浪江に出会って、敵討ちをするという話。

話は色々複雑ですが、なんと言っても勘九郎さんの早替わり!
大道具ばかりではなく傘や蓑など小道具も使った秒単位の早替わ
りに、会場は大いに盛り上がりました。
特に下男正助を演じている時の勘九郎さんが、勘三郎さんを見て
いる様で、なんだかジィ~ンとしてしまいました。

滝壺での大立回りの準備をしている合間に、笑いもまじえてビニー
ルシートの使い方の解説していたら、2階と3階の通路をうわばみ
三次の勘九郎さんが走り回ったりと、幕間も飽きさせない花形歌
舞伎らしい活きの良い演出も楽しませてもらいました。

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初春におめでたい歌舞伎 [歌舞伎]

今日までお正月休みってことで、今年の観劇始めって感じで大阪松竹座に
「壽初春大歌舞伎(昼の部)」を観に行ってきました。
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今回は、初春からおめでたい感じで、八代目中村芝翫さん(中村橋之助改
め)ご一家(四代目中村橋之助さん、三代目中村福之助さん、四代目中村
歌之助さん)の襲名披露興行。
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お祝いムードいっぱいで、特に、佐藤可士和さんデザインの祝幕が異彩を
放っていました(芝と橋と福はなんとなく分かりましたが、歌がよくわかりま
せんでした!)。
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そんな華やいだ雰囲気の中、昼の部の演目の方、先ずは、襲名した息子さ
ん3人が登場しての「吉例寿曽我 “鴫立澤対面の場”」。
福之助さんと歌之助さんの曽我兄弟に兄弟の後見人小林朝比奈に橋之助
さん、敵である工藤祐経ではなく奥方の椰の葉(秀太郎さん)が登場し、狩場
の通行証を渡すと言う、華やかなお祝い狂言を楽しませてもらいました。

次は、八代目中村芝翫さんが務める「梶原平三誉石切 “鶴ヶ岡八幡社頭の
場”」。
主役の梶原平三景時はもちろん芝翫さん、鴈治郎さんの大庭三郎と橋之助
さんの俣野五郎とともに鶴ヶ丘八幡宮を参拝しているところに、六郎太夫(東
蔵さん)と娘梢(児太郎さん)が刀を売りに来る。
大庭が刀を求めようとするが、俣野が訝しがり、刀の目利きのできる梶原に
鑑定を頼んだところ名刀だと鑑定をする。が、300両と言う値段を聞いて、
またまた俣野が口を出し、二つ胴切りができないと名刀ではないと言うので、
罪人を切ることになるが一人しかおらず、どうしても金が欲しい六郎太夫が
自分が切られると申し出て、梶原が試し切りをするが、罪人一人の胴しか切
れず六郎太夫は生き残っる。大庭と俣野は梶原の鑑定違いをなじりながら去
っていくが、残った梶原は六郎太夫に刀との因縁を説明し、本当の名刀であ
ると石の手水鉢を真っ二つに!
こちらも華やかな舞台で、悠然とした芝翫さんの梶原が素晴らしかったです。

最後は、仁左衛門さんが亀屋忠兵衛と父孫右衛門の二役を演じる「恋飛脚
大和往来 “新口村”」。
“梅川忠兵衛”とも呼ばれる近松の書いた有名な世話物“冥途の飛脚”の歌舞
伎版で、特に、この新口村段は有名なので、内容をくどくど説明する必要はな
いですが、大阪から故郷に逃げてきた忠兵衛と傾城梅川(孝太郎さん)が、思
わぬところで父孫右衛門と再会し、涙ながらに別れる場面。
前半は頼りなくも色気のある忠兵衛、後半は子を思う老いた父を見事に演じ
分ける仁左衛門さんが、とにかく素晴らしい!
孝太郎さんの梅川と仁左衛門さんの孫右衛門の細やかで情感溢れるやり取
りに思わず、目が釘付けになってしまいました。

そんなこんなで今年の観劇の一発目は、昨年あんまり観なかった歌舞伎から
のスタートでした。


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歌舞伎でらくだ [歌舞伎]

正月を初春と言うけど本当に初春のような陽気だった本日、会社は今日まで
お正月休みってことで、今年の遊び始めは、大阪松竹座に「壽初春大歌舞伎
(昼の部)」を観に行ってきました。
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演目は、愛之助さんと壱太郎さんの“歌舞伎十八番 鳴神”、扇雀さんの舞踊
“枕獅子”、そして、楽しみにしていた中車さんの久六と愛之助さんの熊五郎と
言う落語でお馴染みの“らくだ”でした。
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先ずは、鳴神。鳴神上人(愛之助さん)が神通力で滝壺に龍神を閉じ込めたた
めに、雨がまったく降らず干ばつの被害が甚大になったことから、朝廷は、雲
の絶間姫(壱太郎さん)と言う美人を鳴神上人のところに遣わす。姫は色香で
鳴神上人をだまし泥酔した隙に、龍神を逃がし自分も逃げ出す。が、騙された
鳴神上人は怒り心頭で弟子の坊さんに当り散らし、姫を追いかけると言う話。
酔いつぶれるまでの前半は、笑いやちょっと下ネタありの楽しい展開、がらりと
変わって、怒り狂った後半の激しい荒事の落差と合わせて、歌舞伎らしい様式
美の世界を楽しませてもらいました。
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そして、こちらも初春の歌舞伎と言う華やかさのある扇雀さんの枕獅子。郭の
座敷で美しい傾城が、扇の獅子舞を踊り蝶に誘われて姿を消し、次に白いた
てがみの獅子が現れ舞う、お正月らしいお目出度い演目でした。

幕間に、高砂堂さんの“栗赤飯まんじゅう”を頬張って後半へ!
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餡子の代わりに入ったほのかに甘くモチモチ食感の赤飯が独特の美味さです。

最後は、らくだ。場面は、ずうたいが大きく無頼漢でらくだとあだ名される宇之
助(亀鶴さん)が、河豚にあたって死に部屋に寝かされ、兄貴分のやたけたの
熊五郎(愛之助さん)が、葬式の工面を考えているところに、紙屑屋の久六(中
車さん)が通りかかる。熊五郎に脅され葬式の手伝いをすることになった久六。
家主幸兵衛(寿治郎さん)のところに行って酒と煮しめを届けるようにと使いっ
走りをさせられ、嫌と言うなら死人にかんかんのうを踊らせると伝言するが、家
主は相手にしない。それならばと、久六にらくだを背負わせ家主のところに連れ
て行きかんかんのうを踊らせ、酒と煮しめを手に入れて、2人で酒盛りをはじめ
るが・・・普段、気弱な久六、実はめちゃ酒癖が悪かったと言う話。
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最後はさらりと終わった感じでしたが、大いに笑わせてもらいました。
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悪人二役 [歌舞伎]

すっかり真夏の暑さの日曜日。今日は、大阪松竹座に「七月大歌舞伎 夜の部
通し狂言 絵本合法衢<立場の太平次>」を観に行ってきました。
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片岡仁左衛門さんが、左枝大学之助と立場の太平次と言う悪の華二役を演じる
演目。
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同じ悪役と言えども大名の分家で本家をのっとろうとする大学之助と在野の無
慈悲な小悪党太平次と言う、まったく違った悪役を見事に演じてらして、見応え
ありました。
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家宝の香炉のゆくえと騙し討ちにされた本家の重臣高橋瀬左衛門の敵討ちと言
う話が絡み合いながら、大学之助と太平次と言う顔のそっくりな悪党二人が、邪
魔な人間を次々に殺していくと言う、なんともすくわれない本当に悪が主役の話
でした。最後の数分間に懲悪をねじ込んで、お客さんが嫌な思いで劇場を出るこ
とは無かったですが、こんな話も面白いなって感じでした。

仁左衛門さんの他は、うんざりお松と弥十郎妻皐月に時蔵さん、与兵衛に錦之
助さん、お亀に孝太郎さん、高橋瀬左衛門と弥十郎は歌六さん、太平次女房お
道は秀太郎さんなどなどでした。

暑いさなかに観た、怪談ではないですが背筋が冷やりとする夏?の歌舞伎!
・・・印象的でした。


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2ヶ月続けての歌舞伎 [歌舞伎]

天気は悪かったんですが、今日は、2ヶ月続けて行われている四代目中村鴈治郎
さんの襲名披露公演「中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露 二月大歌舞伎」
を観に、1月に続けて今月も大阪松竹座に行ってきました。
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1月に、鴈治郎さんの“襲名披露 口上”は聞かせてもらったので、今月は、「市川
猿之助宙乗り狐六法相勤め申し候」って文句に惹かれて夜の部で席を取ってしま
いました。
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公演は、無茶苦茶良かったんですが、公演の感想を書く前に、三津五郎さんの訃
報を知ってしまって、かなり動揺していますので、ちぐはぐな内容になっていると思
います。すみません。
(公演中、なんだか凄い迫力が舞台に漲っていて、一つ一つの演目が心に響いて
感動で身体が熱くなり、ただならぬ雰囲気だな~!なんて思ってました。)

最初の演目は、坂田藤十郎さんがお初を勤める“曽根崎心中”。お初に藤十郎さ
ん、そして、徳兵衛に鴈治郎さん。あまりに有名な作品なので内容で書くことは無
いですが、齢80歳を超えた藤十郎さんの1300回を超えるお初!昨年の歌舞伎
座が最後ってことでしたが、ありがたいことに大阪での再演となったので、見納め
と思って、目に焼き付けておきたい舞台でした。

次の“連獅子”にも、鴈治郎さんが登場し右近&親獅子の精を勤め、左近&仔獅
子の精は壱太郎さん。先ずは、狂言師の右近と左近が出てきて、獅子は我が子
を千尋の谷に落とすという故事を踊ってみせ、蝶に誘われて去っていくと、次に僧
蓮念(猿之助さん)と僧遍念(松緑さん)が登場、狂言“宗論”で笑わせてくれます。
そして、連獅子と言えばってこの場面が直ぐに頭に浮かぶと思いますが、赤と白
のタテガミをぐるぐる回すやつ!ザ!歌舞伎って感じで、何回見てもこれはテンシ
ョン上がりますね!

そして最後は、お目当ての“三代猿之助四十八撰の内 義経千本桜”の川連法眼
館の場。佐藤忠信(実は源九郎狐)はもちろん市川猿之助さん!
静御前(壱太郎さん)が持っている初音の鼓が、両親の革でできていることから、
佐藤忠信に化け静御前のお供をしていた源九郎狐だったが正体を見破られ、初
音の鼓が両親の革でできていることを告げると、哀れに思った義経(門之助さん)
が鼓を源九郎狐に授け、喜んだ源九郎狐が義経の追っ手を退治して、宙乗り狐
六法で去っていくという話。
なにより猿之助さんの早変りや宙乗りなどのケレン味をたっぷり楽しめる舞台で、
最後は会場全体に桜吹雪も舞って、心躍る最高の演目でした。

そんな猿之助さんの宙乗り狐六法を見終わって、大阪松竹座の階段でスマホの
電源を入れていきなり飛び込んできたのが、坂東三津五郎さんの訃報!
あまりのことにぼう然としてしまいました。
勘三郎さんや團十郎のこともあったので、心配をしてたんですが、いくらなんでも
早過ぎますよ!
残念でしょうがないですが、ご冥福をお祈り申し上げます。。。(涙)


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