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簑助さんの引退興行 [文楽]

いよいよコロナ感染者が1000人/日を超える日々が続
いている大阪です。が、本日は、感染に気を付けながら
国立文楽劇場に「令和三年 四月文楽公演(第2部)」
を観に行ってきました。
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第2部の演目は、近松門左衛門作「国性爺合戦(こく
せんやかっせん)」の“平戸浜伝いより唐土船の段”、
“千里が竹虎狩りの段”、“楼門の段”、“甘輝館の段”、
“紅流しより獅子が城の段”でした。
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“平戸浜伝いより唐土船の段”の浄瑠璃は、希太夫さん、
小住太夫さん、津國太夫さん、南都太夫さん、咲寿太
夫さんと三味線が清志郎、清丈、清公。“千里が竹虎
狩りの段”の浄瑠璃は、最初御簾内から亘太夫さんと
三味線の清允さん、そして、奥は三輪太夫さんに三味
線の團七さん、團吾さん、錦吾さん。“楼門の段”の浄
瑠璃は、呂勢太夫さんと三味線が人間国宝の清治さん。
“甘輝館の段”の浄瑠璃は、呂太夫さんと清介さん。最
後の“紅流しより獅子が城の段”の浄瑠璃は、藤太夫さ
んと清友さん。

国性爺合戦は、中国での出来事を題材にした時代物で、
明国の旧臣だった鄭芝龍老一官(玉輝さん)は、政変
に敗れ2歳の娘を中国に残して日本に亡命し、長崎の
平戸で妻をめとり子供の和藤内(玉助さん)と、嫁の
小むつ(簑一郎さん)と漁を生業に暮らしていた。
が、ある日、明国の帝の妹栴檀皇女(清五郎さん)が
小舟で流れ着き、韃靼国の陰謀で明国が滅ぼされよう
としている旨を伝える。栴檀皇女を妻の小むつに預け、
和藤内は、父老一官と母(勘壽さん)ともに中国に渡
る(なんでお母さんがついてくるの?と不思議でした
が、最後にお母さんが大活躍しますと言うか、極論す
ればお母さんが主役です)。
中国に渡った3人ですが、3人で動いたら目立つと言う
ことで、和藤内と母、老一官の二手に別れて、残して
きた老一官の娘錦祥女の夫である五常軍甘輝(玉男さ
ん)に助けを求める目的で甘輝の城を目指します。
途中、千里が竹と言うところで虎に襲われますが、
伊勢の天照大御神のお札の威力で虎を手なずけ、虎
を追っていた韃靼国の兵士たちも服従させ家来にし
て甘輝の城に向かうんですが、この虎との決闘の場
面が秀逸で、串本の無量寺にある長沢芦雪の虎図に
そっくりな可愛くって大きな着ぐるみの虎が舞台狭
しと言うか床まで使って大暴れして大いに笑わせて
くれました。
虎までは、ユーモラスな雰囲気で話は展開しますが、
次の段の甘輝の城に3人が着いた辺りから展開が悲
劇の方向に一気に傾きます。
甘輝の城の楼門では、主人の甘輝が韃靼王に呼び出
され留守と言うことで、甘輝の妻であり老一官の娘
錦祥女(簑助さん)が応対し、男を門の中で入れる
わけにはいかないので、母だけ縛って城に入れ、甘
輝に助力を頼み承知してくれたら白粉、承知してく
れなかったら紅を川に流すと伝えます。
甘輝が帰ってきて事情を伝えると、助勢に応じるが
妻の錦祥女(簑助さんから交代して一輔さん)にほ
だされて助勢をしたと思われるのは恥なので錦祥女
を殺そうとするが、お母さんが止めに入り(手を縛
られているので、歯で着物の袖を噛んで引っ張り錦
祥女を助ける場面が壮絶です)、義娘を殺すのなら
助勢はいらないから2人の元に返してくれと頼み、
錦祥女は不承認の印の紅を川に流します。
その紅の流れを確認した和藤内は、単身、甘輝の館
に乗り込みますが、実は、紅の赤色は錦祥女の血で、
自害して甘輝に助勢を懇願し、それを見たお母さん
が娘だけ死なすわけにはいかないと喉を突き、折り
重なるように自害して、甘輝は和藤内を助勢するこ
とを決意し、和藤内は名を中国風に国性爺鄭成功と
改め、甘輝とともに韃靼王との戦いを決意すると言
う最後です。が、妻と母が瀕死の状態で苦しんでい
るのをほったらかしにして、2人していったん部屋
の奥に引っ込んで、豪華な衣装に着替えるってどう
よッ!と、思わず突っ込みを入れたくなる感じです。

不条理な展開はともかく、4月15日に人形遣いで人
間国宝の吉田簑助さんが四月公演の千秋楽をもって
引退すると発表され、奇しくも簑助さんが出演され
る第2部を選んだおかげで、簑助さんの見納めをす
ることができました。
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簑助さんは、齢87と言うご高齢な上、20年ほど前
に脳出血で倒れ、お身体がご不自由な中で、長らく
文楽を引っ張ってこられた方です。簑助さんが操る
女性の人形たちは、気品があって可愛くって、言い
古された表現ですが、それこそまるで生きているよ
うでした。
長い間、楽しませていただき、ありがとうございま
した。本当にご苦労様でした。

観劇した第2部の演目とは関係無いですが、第3部で
上演される“小鍛冶”と言う演目が、オンラインゲー
ムの刀剣乱舞に登場する“小狐丸”の誕生秘話と言う
ことで、コラボ企画として、刀剣乱舞の小狐丸を模
した小狐丸人形と、小狐丸のパネルが飾ってあり、
ファンと思しき方々が並んで記念撮影をしてました。
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きっかけは何でも良いので文楽を見に来てくれる方
が増えるのは、喜ばし事だと思います。

国立文楽劇場とは直接関係無いですが、文楽とのコ
ラボ企画と言えば、同じく第3部の演目“傾城阿波の
鳴門”に関して、いつも傾城阿波の鳴門を上演してい
る淡路島福良にある淡路人形座において、清川あさ
みさんプロデュースで、いとうせいこうさんが脚本
を務めた「戎舞+(プラス)」が上演されてます。
コロナ禍で県境をまたぐ移動を控えているので、今
は見に行けませんが、5月30日までやっているので、
コロナが少し落ち着いたら見に行きたいなと思って
ます、と言うか祈ってます。

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