SSブログ

和歌三昧の春の能 [能・狂言]

コロナの感染が再拡大し、明日からのんびりした響きの
マンボウではなく“まん防(まん延防止等重点措置)”が
はじまる大阪です。が、今日は、山本能楽堂に「四月の
たにまち能」を観に行ってきました。
IMG_8326.JPG IMG_8328.JPG 
本日の番組は、春らしく、能の“羽衣”、狂言で“土筆(つ
くづくし)”、仕舞で“兼平”と“阿漕(あこぎ)”、能の“西
行桜”でした。
IMG_8334.JPG 
先ずは羽衣で、シテ(天女)は山本麗晃さん、ワキ(漁
師の白龍)は廣谷和夫さん。
お馴染みの羽衣伝説の話ですが、こちらは、漁師が羽衣
を奪って天女を嫁にするみたいな展開ではなく、漁師が
松の枝にかけてある羽衣を取るんですが、天女が気づい
て返してくれと願うと舞を舞ってくれるならと言って羽
衣を返し、お礼に天女が舞を舞うと言う話です。
天女が謡う“天の原ふりさけ見れば霞立つ 雲路まどいて
行方知らずも”が、百人一首でお馴染みの安部仲麿の“天
の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出し月かも” が
思い浮かばれ、遠い天界を思う天女と遠い日本を思った
安部仲麿が重なり、もの悲しさが感じられました。

次は、網谷正美さんと増田浩紀さんの狂言で土筆なんで
すが、つくしではなくつくづくしと読むみたいです。
ある男が春の陽気に誘われ友人と二人で野遊山に出かけ、
土筆を見つけて“つくづくしの首しおれてぐんなり”と詠
うが、ぐんなりはヘンだよと友人に笑われたので、この
歌には引歌があると言って“我が恋は松を時雨の染めか
ねて 真葛が原に風騒ぐんなり”と詠うが、それは“真葛
が原に風騒ぐなり”だとさらに笑われる。さらに進むと
芍薬を見つけ、今度は友人が“難波津に芍薬の花冬ごも
り 今は春べと芍薬の花”と詠むが、それは“難波津にさ
くやこの花冬ごもり 今は春べとさくやこの花”だと指
摘して、言い争ったあげく相撲で勝負をすると言う話。
和歌の飛び交う楽しい狂言です。

そして、仕舞の“兼平”と“阿漕”の後、“西行桜”。シテ
(老桜の精)は山本章弘さん、ワキ(西行法師)は福
王和幸さん。
西行法師が詠んだ“花見んと群れつつ人の来るのみぞ
あたら桜の咎(とが)にはありける”を題材にした世
阿弥の能だそうです。
京都西山にある西行法師の庵に立派な桜の古木が生え
ていて、西行法師が満開に咲きほこる桜を楽しんでい
たら、京都の市中から花見客がたくさん訪れ追い返す
のも悪いので引き入れた。が、一人で静かに桜を楽し
みたかったとの思いから思わず“花見んと群れつつ人
の来るのみぞ あたら桜の咎にはありける”と言う和歌
を詠んでしまう。それを聞いていた桜の精が、俺のせ
いとは聞き捨てならん!と夢枕に立つと言う話。
能舞台の中央に置いてある頭に桜の花を飾った小ぶり
のガゼボ(バラ園とかによくある花のドームみたいな
奴)みたいな作り物の中に白髪ロン毛のお爺さんの桜
の精が座って現れる風情はかなりシュールです。

春を感じる素敵な公演だったんですが、コロナで観劇
数がめっきり減った私にとっては、換気のための10分
間の休憩のみの3時間余りにわたる能の公演は、集中
力とお尻が限界でした!涙
そんな私にもお能が楽しめる工夫って感じで、あらす
じを漫画にしてあるチラシが挟んでありました。
IMG_8332.JPG 
判りやすかったです。素晴らしい!

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。